WEBセミナー ホスピスのこころ

第7回 「『座る』ことと『聴く』こと」

2017-03-30

ホスピス緩和ケアで一番大切にしていることは「対話」です。なぜかというと、ホスピス緩和ケアの治療あるいはケアの目標が患者さんごとに異なるからです。一般の医療では、患者さんがだれであっても基本的に疾患の治癒・改善あるいは命を長らえるという目標が決まってきます。しかし病気の治癒あるいは改善が困難になり、死が避けられない状況になった場合に、治療あるいはケアのゴールは患者さんごとに異なってきます。それぞれの患者さんの個別性が大切で、その方が何を大切にし、どのような希望があり、どのような心配があるのかはその方から直接伺うしか方法がありません。それで、私たちは患者さん・ご家族との「対話」を大切にしているのです。

札幌南青洲病院緩和ケア病棟では、毎週金曜日に総回診を行っていますが、下の写真のような感じで回診を行っています。何か一風変わった風景ですね。一般の病院では回診の時、医師は患者さんのベッドサイドで立って話をするのが普通です。私は30年前、まだ外科医であった時に、当時わが国でまだ2か所しかなかったホスピスの一つであった淀川キリスト教病院ホスピスで当時同院ホスピス長であった柏木哲夫先生の病棟回診に同行させて頂きました。その時、医師が患者さんのベッドサイドで座って患者さんと話しをするのを目の当たりにして、新鮮な驚きを覚えたことを思い出します。

患者さん・ご家族との対話において座ることを大切にしている理由を挙げますと、まず医療者が座ることにより患者さんとの目線の高さが一致するということがあります。医療者が患者さんのベッドサイドで立っていると、医療者と患者さんとの間に物理的な上下関係が生じます。物理的な上下関係は心理的な上下関係になります。医療者が立っていると患者さんは心理的に圧迫感を受けるのです。つまり、医療者が座ることにより、患者さんと医療者は対等な関係になるのです。

次に、医療者が座ることは患者さんに対し、「私はあなたとお話をする準備があります。」とか「私はあなたとお話をする時間を取っていますよ」というメッセージになります。ある研究によると同じ時間でも医療者が患者さんと座って面談したほうが、立ってお話をするより患者さんは時間を長く感じるという報告があるほどです。

医療者が座って次に行うことは患者さんからお話を「聴く」ということです。医療者は患者さんとの面談においてともすると一生懸命に説明しようとしてたくさん話してしまうことがあります。しかし、終末期の患者さんとの対話で大切なことは患者さんからお話を伺うという姿勢です。医療者は患者さんが何でも話しやすい雰囲気を作り出すことが重要です。患者さんに思っていることを話していただくためには、医療者はOpen Question(開かれた質問)をするのが良いと言われています。例えば、「今日はいかがですか?」のように、患者さんはどのような答え方もできる質問です。それに対し、「痛みはありますか?」とか「昨日の夜は眠れましたか?」といった質問はClosed Question(閉じられた質問)と言いますが、質問の内容が限られているので、患者さんは「はい」とか「いいえ」といった限られた答え方しかできません。例えば、患者さんが「昨日の夜は眠れなくて」と言われたら、「そうですか、昨晩眠れなかったのですね。」とか「そうですか、それはおつらかったですね。」というように、患者さんの言葉を繰り返したり、言い換えたり、うなづいたり、共感したりしながら、患者さんがさらに話しやすくすることが大切です。

今後も、私たちは患者さん・ご家族との対話を大切にしたいと考えております。

 

                       理事長 前野 宏

第7回挿入写真_ホスピス回診

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